ベランダ防水のDIY、ちょっと待った!プロが教える「自分でできる範囲」と「プロに頼むべき症状」

ふと自宅のベランダを見たとき、「床の色がなんだか薄くなってきたな」「隅の方に小さなひび割れがあるな」と気になることはありませんか。業者に頼むほど大げさなことでもないし、できれば費用も安く抑えたい。そんな時、「これくらいなら自分で防水塗装できるかも」と考えるのは、ごく自然なことだと思います。


最近はインターネットで検索すれば、DIYでの防水手順を紹介する動画やブログがすぐに見つかります。「週末だけでできる!」「初心者でも簡単!」といった言葉を見ると、自分にもできそうな気がしてきますよね。ホームセンターに行けば、様々な防水塗料が並んでいて、気軽に挑戦できる環境が整っています。


しかし、その手軽さの裏には、意外と知られていないリスクや大変さが隠れているのも事実です。ベランダの防水は、見た目をきれいにするだけでなく、建物の内部に水を浸入させないための重要な役割を担っています。もし安易なDIYで失敗してしまうと、かえって状況を悪化させ、余計な修理費用がかかることにもなりかねません。


ここでは、DIYを頭ごなしに否定するのではなく、プロの視点からその魅力と現実を正直にお伝えします。後悔しない選択をするために、まずはその光と影の両面をしっかりと見ていきましょう。




費用が安いだけじゃない?DIYのメリットと、意外と知らない大変さ

ベランダ防水のDIYを考えるとき、やはり一番の魅力はコストを抑えられることでしょう。しかし、挑戦する前には、そのメリットだけでなく、見過ごされがちな「大変さ」も天秤にかけて考えることが大切です。



ベランダ防水DIYの魅力(光)

まず、何と言っても業者に依頼する際に発生する人件費がかからないため、費用を材料費だけで済ませられるのが最大のメリットです。浮いた予算を他のことに使えると考えると、とても魅力的ですね。

また、自分の手で住まいをメンテナンスすることで、作業を終えた後には大きな達成感が得られますし、きれいになったベランダへの愛着も一層深まるでしょう。そして、業者との日程調整などを気にすることなく、週末や連休といったご自身の都合の良いタイミングで、自分のペースで作業を進められる自由度の高さもDIYならではの利点と言えます。



知っておくべきDIYの現実(影)

一方で、プロではない方が直面する現実的な困難も数多く存在します。

・一番大変で、一番重要な「下地処理」

DIYで失敗する最も大きな原因が、この下地処理の手間を甘く見ていることです。高圧洗浄機でしつこい汚れを落とし、浮き上がった古い塗膜をヘラやブラシでゴシゴシと剥がしていく「ケレン」という作業は、想像以上に地味で体力のいる作業です。ここを疎かにすると、どんなに高級な塗料を塗っても、すぐに剥がれてしまいます。


・実は難しい「材料選び」

ホームセンターには多種多様な防水塗料が並んでいますが、ご自宅のベランダの床がどんな素材(FRP、ウレタン、コンクリートなど)でできているかによって、最適な塗料や、その前に塗るべき下塗り材(プライマー)は全く異なります。もし適合しない材料を選んでしまうと、塗料がうまく密着せずに、数ヶ月で浮き上がってくることも珍しくありません。


・天候という名の「運要素」

防水塗料は、塗ってから完全に乾くまで時間がかかります。下塗り、中塗り、上塗りと工程を重ねる中で、途中で雨に降られてしまうと、全てが台無しになる可能性があります。数日間、安定した晴天が続くタイミングを見計らう必要があり、計画通りに進まないことも覚悟しなければなりません。


・保証は「自分自身」

そして最大のリスクは、もしDIYが原因で雨漏りが悪化した場合、その責任はすべてご自身にあるということです。業者に依頼すれば、通常は工事保証がつきますが、DIYにはもちろんありません。結果的にプロに手直しを頼むことになり、「最初から頼んでおけばよかった…」と、余計な出費に繋がるケースも少なくないのです。




一番怖いのは「DIYのやり直し」。見えないとこ挑戦するならここが肝心!DIY防水の基本ステップ

前セクションでお伝えしたDIYの「影」の部分を理解した上で、それでも「自分のベランダの状態なら挑戦できそうだ」と判断された方のために、失敗のリスクを少しでも減らすための基本的な手順と、プロが特に気をつけているポイントを解説します。作業はすべて自己責任となることを忘れずに、慎重に進めてください。



ステップ1:徹底的な清掃と高圧洗浄

まず、ベランダの表面にある土や砂、落ち葉、コケなどをホウキで完全に取り除きます。その後、高圧洗浄機を使って、目に見えない細かな汚れや劣化した古い塗膜を徹底的に洗い流しましょう。この作業を怠ると、新しい塗料が下地にうまく密着せず、早期の剥がれの原因となります。洗浄後は、下地が完全に乾くまで、最低でも1日以上は時間を置くことが重要です。



ステップ2:下地処理(ケレン・ひび割れ補修)

ここがDIYの成否を分ける最も重要な工程です。高圧洗浄でも剥がれなかった古い塗膜の浮いている部分や、剥がれかけている部分を、皮スキ(ヘラの一種)やワイヤーブラシを使って物理的に削り取っていきます。この「ケレン」と呼ばれる作業は非常に地味で根気がいりますが、ここを頑張ることで、新しい防水層の寿命が大きく変わってきます。

また、0.3mm以上のひび割れがある場合は、ホームセンターなどで手に入るシーリング材を充填して、水の侵入口を確実に塞いでおきましょう。この一手間が、雨漏りを防ぐ上で非常に大切です。



ステップ3:養生と下塗り(プライマー塗布)

作業に入る前に、塗料が付着してはいけない場所を保護します。壁の低い部分やサッシのレール、排水溝(ドレン)の周りなどを、マスキングテープやマスカーと呼ばれるビニールシートで丁寧に覆いましょう。この「養生」をしっかり行うことで、作業に集中できるだけでなく、最終的な仕上がりの美しさが格段に向上します。

養生が終わったら、いよいよ塗装工程です。しかし、いきなり防水塗料を塗ってはいけません。まずは、下地と防水塗料を強力に接着させる「プライマー」という下塗り材を塗布します。これを省略すると、防水層の耐久性が著しく低下します。塗り残しがないように、ムラなく均一に塗ることを心がけてください。プライマー塗装後も、メーカーが指定する乾燥時間を必ず守りましょう。



ステップ4:中塗り・上塗り

プライマーが完全に乾いたら、いよいよ主役である防水塗料を塗っていきます。この時、一度に厚く塗ろうとせず、必ず2回(塗料によっては3回)に分けて塗り重ねることが鉄則です。1回で厚塗りすると、表面だけが乾いて内部が乾かない「乾燥不良」を起こし、後々のひび割れや膨れの原因になります。

1回目の「中塗り」が終わったら、規定の乾燥時間をしっかり守り、完全に乾いてから2回目の「上塗り」を行います。ローラーやハケを使い、塗りムラや塗り残しがないように、丁寧に作業を進めましょう。全ての塗装が終わった後も、塗料が完全に硬化するまではベラン-ダの使用を避けるようにしてください。




このサインを見つけたらプロに相談!DIYでは手に負えない劣化症状

DIYでの防水手順は、あくまでベランダの表面が軽く劣化した「軽症」の場合に限られます。人間の健康診断と同じで、中には専門家による正確な診断と処置が必要な「重症」のケースも少なくありません。もしご自宅のベランダにこれから挙げるようなサインが見られたら、それは建物からの危険信号です。安易に自分で何とかしようとせず、一度プロに見てもらうことを強くお勧めします。



サイン1:深くて構造に関わりそうな「ひび割れ」

表面の塗膜にうっすらと入っている髪の毛のようなひび割れ(ヘアクラック)とは違い、明らかに深く、幅のあるひび割れは非常に危険なサインです。目安として、ひびの幅がシャープペンシルの芯(0.5mm程度)よりも広い場合は注意が必要です。こうしたひびは、防水層だけでなく、その下のコンクリートまで達している可能性が高く、雨水の直接的な侵入口となります。DIYで表面だけを塞いでも、内部に侵入した水がコンクリートの中の鉄筋を錆びさせ、建物の寿命を縮めてしまう恐れがあります。



サイン2:雨上がりにいつもできる「水たまり」

ベランダの床は、雨水が排水溝に向かって自然に流れていくよう、通常はごく僅かな傾斜(勾配)がつけられています。それにもかかわらず、雨が降るたびにいつも同じ場所に水たまりができる、一日経っても水が引かない、という場合は、床そのものが歪んだり、凹んだりしている証拠です。これは塗装で解決できる問題ではなく、モルタルなどを塗って勾配を調整し直す「左官工事」が必要になるケースがほとんど。完全に専門家の領域となります。



サイン3:広範囲にわたる「膨れ」や「剥がれ」

防水層の表面が、まるで風船のようにプクッと膨れていたり、広範囲にわたってベロリと剥がれていたりする症状も、DIYでの対応は不可能です。これは、防水層の下にすでに水が入り込んでしまっている明確な証拠。この上から塗装をしてしまうと、内部の水分を閉じ込めてしまい、夏場の気温上昇による熱膨張などで、さらに膨れが悪化してしまいます。既存の防水層を一度すべて撤去してから、下地を乾燥させ、新たに防水層を作り直すという大掛かりな工事が必要になります。




ぶっちゃけ、プロに頼んだらいくらかかる?

DIYでは対応が難しい症状があること、そしてDIY自体にも相応の手間とリスクが伴うことを考えると、「では、実際にプロに頼むとどうなるの?」という点が気になりますよね。費用はもちろんかかりますが、それ以上に得られる「安心感」や「確実性」という価値もあります。ここでは、業者に依頼した場合の費用感と、一般的な工事の流れを見ていきましょう。


プロに頼んだ場合の費用相場

ベランダ防水の費用は、広さや劣化状況、採用する工法によって変動しますが、ひとつの目安として、マンションで一般的な10㎡(約6畳)程度のベランダで、最もポピュラーな「ウレタン防水」を行った場合、総額で8万円~15万円程度になることが多いです。

この金額には、DIYなら自分で行う必要のある高圧洗浄、ケレン作業などの下地処理、丁寧な養生、そしてもちろんプロの技術料や廃材の処分費などがすべて含まれています。もし劣化が激しく、特別な下地補修が必要な場合は、別途費用がかかることもあります。DIYの材料費と比べると高く感じますが、失敗のリスクがなく、数年単位での保証が付くことを考えれば、一概に高いとは言えないかもしれません。



プロに依頼した場合の基本的な流れ

実際に業者に頼む場合、以下のような流れで進むのが一般的です。


問い合わせ・現地調査の依頼: まずは電話やウェブサイトから、信頼できそうな業者に連絡を取ります。


現地調査・診断: 専門家が実際にベランダの状態を見て、劣化の状況や原因を細かくチェックします。


見積もりの提出・説明: 調査結果をもとに、最適な工法と詳細な見積書が提示されます。この時、なぜこの工事が必要なのか、分かりやすく説明してくれるかどうかが、良い業者を見極めるポイントです。


契約・工事日程の調整: 内容と金額に納得できたら契約し、工事の日程を決めます。

施工: 近隣への挨拶から始まり、養生、下地処理、防水工事まで、安全かつ確実な作業が進められます。


完了確認・保証書の発行: 工事が終わったら、仕上がりを一緒に確認。アフターフォローのための保証書が発行され、すべて完了となります。


まずはご自宅のベランダがどんな状態なのか、専門家の目線で知ることから始めてみるのも一つの手です。どんな防水工事があるのか、その種類を見てみるだけでも参考になりますよ。

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ベランダは建物を守る最前線。後悔しない選択を。

ベランダ防水のDIYについて、その魅力と現実、具体的な手順からプロに頼むべきサインまで、様々な角度から見てきました。普段、洗濯物を干したり、ちょっと外の空気を吸ったりする身近な空間ですが、ベランダは一年中、厳しい紫外線や風雨に晒されながら、私たちの住まいを水から守ってくれている「最前線」だということを、改めてご理解いただけたかと思います。


「DIYに挑戦するか、プロに依頼するか」という問いに、たった一つの絶対的な正解はありません。ベランダの劣化がごく軽微で、この記事で解説した手順やリスクを十分に理解し、何よりご自身で作業を楽しむ覚悟があるのなら、DIYに挑戦する価値は十分にあります。


一方で、少しでも「自分には難しいかも」という不安を感じたり、ご紹介した「プロに頼むべきサイン」が一つでも見られたりした場合は、迷わず専門家を頼ることが、結果的に最も賢明な判断となるでしょう。


最終的に大切なのは、費用、手間、仕上がりの確実性、そして将来にわたる安心感。これらの要素を天秤にかけ、ご自身が「これなら納得できる」と心から思える選択をすることです。この記事が、あなたが後悔しないための判断の一助となれば、これほど嬉しいことはありません。


もし専門家の意見を直接聞いてみたくなったら、気軽に相談の連絡をしてみてはいかがでしょうか。

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