マンションの屋上防水工事を検討し始め、いくつかの業者に相談してみたものの、「A社はウレタン防水が一番だと言い、B社はこれからはシート防水が主流だと勧めてくる…」といったように、業者ごとに提案内容が異なり、ますます混乱してしまった、という経験はありませんか。
ウレタン、シート、アスファルト…専門用語が並び、それぞれの違いが今ひとつ分からないままでは、提示された見積もりが本当に自分たちのマンションにとって最適なのか、判断するのは非常に困難です。高額な費用がかかる工事だからこそ、「業者に言われるがまま契約して後悔したくない」と不安に思うのは当然のことです。
実は、屋上防水工事には「どんな建物にも効く万能薬」のような絶対の正解は存在しません。最適な工法は、そのマンションの現在の状態、屋上の形状、そして将来の修繕計画によって一棟一棟まったく違うのです。
この記事を読めば、主要な防水工事の種類ごとの特徴が明確に理解でき、業者からの提案内容を自分たち自身で吟味するための「判断基準」を持つことができます。もう業者選びで迷わないために、まずは基本から学んでいきましょう。
■ 【完全比較】主要な屋上防水3種類のメリット・デメリット・費用・耐用年数

マンションの屋上防水で採用される工法は数多くありますが、主流となっているのは大きく分けて3種類です。それぞれの特徴を理解することが、適切な工法選びの第一歩となります。
・ウレタン防水
液体状のウレタン樹脂を、職人がコテやローラーを使って塗り重ねていく工法です。液体なので、室外機や配管などがある複雑な形状の屋上にも、つなぎ目のないきれいな防水層を作れるのが最大のメリットです。費用も比較的安価ですが、仕上がりが職人の技術力に左右されやすいという側面もあります。耐用年数は10年~13年が目安で、定期的なトップコート(表面保護塗装)のメンテナンスが推奨されます。
・シート防水
塩化ビニルやゴムでできたシートを、接着剤や特殊な金具で下地に固定していく工法です。工場生産された均一な厚みのシートを使うため、安定した防水性能が期待でき、耐用年数も13年~18年と比較的長いのが特徴です。広くて平坦な屋上に向いていますが、シート同士のつなぎ目部分の処理が防水性能を保つ上で非常に重要になります。
・アスファルト防水
古くからある非常に信頼性の高い工法で、液状のアスファルトと、アスファルトを含浸させたシート状の材料を交互に何層も重ねて、厚く頑丈な防水層を形成します。その防水性能と耐久性は他の工法と比べても非常に高く、耐用年数は15年~25年にも及びます。ただし、工事中に特有の臭いや煙が出ることがあり、他の工法に比べて重量があるため、建物の構造によっては採用できない場合もあります。
このように、どの工法にも一長一短があります。しかし、最適な工法を選ぶためには、こうした表面的な特徴だけでなく、さらに専門的な視点が必要になります。
■ プロはここを見ている!工法の種類選びを左右する3つの隠れたチェックポイント

経験豊富な専門家が防水工事の種類を選ぶ際、単に屋上の広さや形状だけを見ているわけではありません。建物の将来まで見据えた、隠れた重要ポイントがあります。ここでは、プロが必ずチェックする3つの視点をご紹介します。
・ポイント1:「既存の防水層」との相性
現在、屋上にある防水層の種類は何か。これは工法選びの非常に重要な出発点です。例えば、既存の防水層を撤去せずにその上から新しい防水層を重ねる「かぶせ工法」を選ぶ場合、両者の相性が問われます。相性が悪い材料を重ねてしまうと、数年で膨れや剥がれといった不具合を起こす原因になります。既存の防水層が何かを正確に診断し、最適な工法を選択することが、長持ちする防水工事の基本です。
・ポイント2:「屋上の利用状況」
その屋上は、普段人が立ち入ることがない場所でしょうか。それとも、定期的に点検や清掃で人が歩く場所でしょうか。歩行頻度が高い場合は、人の往来による摩耗に強い工法や、表面を保護する仕上げを選ぶ必要があります。利用状況を無視して工法を選ぶと、防水層の劣化を早めてしまう可能性があります。
・ポイント3:「長期修繕計画との整合性」
今回の防水工事が、マンション全体の長期修繕計画の中でどのような位置づけにあるのか、という視点も欠かせません。例えば、5年後に外壁などの大規模修繕を控えているのであれば、それに合わせて耐用年数が長すぎる高価な工法を選ぶのは非効率かもしれません。逆に、次の大規模修繕まで15年以上あるなら、それに耐えうる高い耐久性を持つ工法を選ぶべきです。今回の工事単体で考えるのではなく、将来のメンテナンスコストまで含めたトータルコストで判断することが重要です。
■ 間違った“種類選び”が招く…よくある3つの悲劇
防水工事の種類選びは、単なる仕様の選択ではありません。建物の状態に合わない工法を選んでしまうと、せっかくの工事が無駄になるばかりか、より深刻な事態を招くことさえあります。ここでは、工法選びの失敗が招く3つの典型的な悲劇をご紹介します。
・悲劇1:相性の悪さから、数年で防水層が膨れてきた
「費用が安いから」という理由だけで、既存の防水層との相性を考えずに新しい防水工事を行った結果、数年で防水層のあちこちに気泡のような膨れが発生。これは、古い防水層から発生する湿気の逃げ場がなくなり、新しい防水層を押し上げてしまう現象です。結局、一度すべて剥がしてやり直すことになり、当初の倍以上の費用がかかってしまいました。
・悲劇2:最新工法を選んだが、施工不良で雨漏りが再発
「耐久性が高い最新の工法です」という営業トークを信じて契約。しかし、その業者は新しい工法の施工経験が浅く、メーカーが定める施工手順を守れていませんでした。結果、工事完了からわずか1年でシートのつなぎ目から雨漏りが再発。保証を求めても対応が遅く、別の業者に調査を依頼する羽目になりました。
・悲劇3:メンテナンス費用がかさみ、結局高くついた
初期費用を抑えることだけを考え、耐用年数が短く、こまめなメンテナンスが必要な工法を選んでしまったケースです。5年ごとにトップコートの塗り替えが必要になり、その都度足場代や人件費が発生。結局、20年間のトータルコストで計算すると、初期費用は高くても耐久性の高い工法を選んだ方がずっと安く済んだことが判明しました。
これらの悲劇は、いずれも建物の現状を正確に把握せずに、表面的な情報だけで工法を選んでしまったことに起因します。
■ 最適な種類は「建物診断」が教えてくれる。信頼できるパートナーの条件とは
ここまで読んで、「自分たちだけで最適な工法を選ぶのは難しい」と感じた方も多いかもしれません。その通りです。最適な防水工事の種類は、インターネットで調べるものではなく、専門家による正確な「建物診断」の結果が教えてくれるものです。では、信頼できるパートナーとしての専門業者をどう見極めればよいのでしょうか。
・条件1:客観的データに基づき、複数の選択肢を公平に提示・説明してくれるか?
信頼できる業者は、特定の工法を一方的に押し付けることはしません。まずは赤外線調査などで建物の状態を科学的に診断し、その客観的データに基づいて「この建物であれば、A、B、Cという選択肢があります」と複数の工法を提示します。そして、それぞれのメリットだけでなく、デメリットや将来的なメンテナンスコストまで正直に説明し、最終的な判断を委ねてくれます。
・条件2:あらゆる工法に対応できる、高い技術力を持つ自社職人がいるか?
業者によっては、得意な工法と不得意な工法があります。本当に建物に合った最適な提案ができるのは、ウレタン、シート、アスファルトといったあらゆる工法に対応できる、高い技術力と経験を持つ自社職人を抱えている会社です。そのような会社であれば、自社の都合ではなく、本当にお客様のためになる提案ができます。
・条件3:屋上だけでなく、建物全体の視点で修繕計画を提案してくれるか?
屋上の劣化は、建物全体の老朽化の一つのサインです。優れた業者は、屋上だけでなく外壁や鉄部なども含めて建物全体の健康状態を把握し、長期的な視点での修繕計画をアドバイスしてくれます。例えば、屋上防水で足場を組む際に、同時に外壁の補修も行う「大規模修繕工事」を計画的に行うことで、将来的なトータルコストを大きく削減できます。
このような条件を満たす専門家であれば、あなたのマンションにとって最良の選択を共に考えてくれるはずです。
まずは、専門家による正確な診断を受け、ご自身のマンションの状態を客観的に把握することから始めてみませんか。
https://www.tsukaken-inc.jp/aboutus
■ まとめ:工法の種類選びは、すなわち業者選び。まずは専門家による「健康診断」から
今回は、マンション屋上防水の様々な種類について、その特徴からプロの選び方までを解説しました。
ウレタン、シート、アスファルト、それぞれに優れた特徴がありますが、どの工法が最適かを決めるのは、カタログのスペックではなく、あなたのマンション自身の状態です。そして、その状態を正確に読み解き、最善の処方箋を提案できるのは、経験豊富な専門家だけです。
つまり、最適な「防水工事の種類」を選ぶという行為は、信頼できる「専門業者」を選ぶことと、ほぼ同義と言えるでしょう。
まずは、信頼できる専門家にあなたのマンションの「健康診断」を依頼し、現在の状態を正確に把握することから始めてください。それが、後悔のない防水工事を実現し、大切な資産を未来へと守り継ぐための、最も確実な一歩となります。
より詳しい情報や、専門家による建物診断のご相談は、お気軽にお問い合わせください。

